マンションの快適な生活を支える排水システムにおいて、「通気管」は目立たないながらも極めて重要な役割を担っています。排水管は水や汚水を流す主役ですが、通気管はその主役のパフォーマンスを最大限に引き出すための名脇役と言えるでしょう。通気管の主な役割は、排水管内部の気圧を調整することです。水が排水管を流れる際には、その水の動きによって管内に負圧(吸引力)や正圧(押し出す力)が生じます。特に高層のマンションでは、大量の排水が一気に縦管を流れるため、この圧力変動が大きくなります。もし通気管がなければ、この圧力変動によって「サイホン作用」が起こり、各住戸の排水トラップに溜められている水(封水)が吸い上げられてしまう危険性があります。封水は下水からの悪臭や害虫の侵入を防ぐ役割をしているため、これが失われると、室内に不快な臭いが充満したり、害虫が侵入したりする原因となります。通気管は、この圧力変動を緩和し、排水管内に適切な空気の流れを確保することで、水をスムーズに流す手助けをします。また、排水管内の空気の流れを円滑にすることで、管内の洗浄作用を保持し、汚れの付着を抑制する効果も期待できます。 マンションの通気方式には、「伸頂通気方式」や「ループ通気方式」、「各個通気方式」などがあり、建物の構造や規模によって適切な方式が採用されます。通気管は屋上まで伸ばされ、先端には「ベントキャップ」と呼ばれる金物が取り付けられています。このベントキャップは、雨水や異物の侵入を防ぎつつ、空気だけを通す役割を果たします。しかし、経年劣化によりベントキャップが錆びて閉塞したり、鳥などが巣を作ったりすると、通気機能が低下し、排水不良や悪臭の原因となることがあります。排水管の定期清掃の際には、通気管が本来の機能を果たしているかどうかも併せて点検することが、快適なマンションライフを維持するために非常に重要です。
通気管がマンション排水システムに果たす役割