築年数の経過した分譲マンションで管理組合の役員を務めている私の経験からお話しすると、居住者の方々が意外と知らないことの筆頭に挙げられるのが、自分の部屋の水道元栓がどこにあるのかという問題です。ある日の深夜、階下の住人から天井から水が漏れてきているという悲鳴のような連絡が入った際、原因となった上階の住人はパニックに陥り、家中の蛇口を閉めて回るばかりで、大本の供給を止めるという発想に至りませんでした。結局、私たちが駆けつけて玄関横のパイプスペースの扉を開け、元栓を閉めるまでの十五分間に、リビングの高級な床材は修復不可能なほど水を吸い込み、階下の家財道具にも甚大な被害が出てしまいました。このような事態を避けるためにまず知っておくべきは、マンションやアパートといった集合住宅の場合、水道元栓は玄関ドアのすぐ横にある鉄製の扉、いわゆるパイプスペースの中に収納されていることがほとんどだという事実です。扉を開けると、そこにはガスメーターや給湯器と共に、円形のガラスに覆われた水道メーターがあり、そのすぐ隣にハンドル型のバルブやレバー式の元栓が設置されています。古い建物の場合はバルブがサビで固着していることもあるため、引っ越し当日や大掃除の際などに、実際に自分の手で回せるかどうかを確認しておくことが極めて重要です。戸建て住宅にお住まいの方であれば、元栓は家の外の地面に埋設されている水道メーターボックスの中にあります。駐車場や玄関アプローチ、あるいは庭の隅の方に、青色や黒色のプラスチック製、もしくは金属製の四角い蓋を見つけることができるはずです。蓋には「量水器」や「水道」といった文字が記されています。もし長年放置して周囲の土砂や落ち葉で蓋が隠れてしまっている場合は、いざという時に見つけ出すことが困難になるため、平時のうちに場所を特定し、蓋の上に物を置かないように徹底しておかなければなりません。水というものは、一度漏れ始めると想像を絶するスピードで家全体を侵食していきます。特に最近の住宅は高気密・高断熱であるため、床下に流れ込んだ水が乾きにくく、後からカビや構造材の腐食を引き起こす二次被害も少なくありません。こうしたリスクを管理する上で、水道元栓の場所を把握し、即座にアクセスできる状態に整えておくことは、火災保険に加入することと同じくらい、あるいはそれ以上に実効性のある防衛策となります。また、元栓には家全体の供給を止める主弁以外にも、トイレや洗面台のシンク下に個別の止水栓が設けられていることが一般的です。一部の蛇口からの水漏れであれば、まずはその個別の止水栓を探し、それでも止まらない場合や場所が分からない場合に、外の元栓へ走るという順序を家族全員で共有しておくべきです。災害時、特に大きな地震が発生した際も、家の中の配管が損傷している可能性があるため、避難する前に元栓を閉めることが、帰宅後の水浸し被害を防ぐ賢明な判断となります。水道元栓は、私たちが清潔で快適な生活を送るための源流であると同時に、トラブル時には被害を食い止める最後の砦でもあります。
水道元栓の場所を把握して不測の水漏れ被害を最小限に防ぐ