浴室で「シャワーが出ないのにカランは正常に機能する」という現象は、水回りのトラブルの中でも特に多く見られます。これは、給水経路がシャワーとカランで一部異なること、そして混合水栓内部の仕組みにその原因が隠されているためです。ここでは、その技術的な側面を詳しく解説します。 まず、最も考えられる原因の一つはシャワーヘッドの目詰まりです。シャワーヘッドの散水板には微細な穴が多数開いていますが、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分(いわゆる水垢)や、錆、その他の微粒子がこれらの穴に付着し、堆積することで水の流れを阻害します。カランの吐水口はシャワーヘッドの穴よりも大きいため、同じ程度の水垢が付着していても水の流れに影響が出にくいのです。 次に重要なのが、混合水栓内部の切り替え弁(切替バルブ)の不具合です。混合水栓は、水とお湯を混合し、シャワーとカランのどちらに供給するかを切り替える機能を担っています。この切り替え弁は、内部にゴム製のパッキンやセラミック製のカートリッジなどが組み込まれており、これらが経年劣化により固着したり、破損したりすると、シャワー側への水路が適切に開かなくなります。特に、切替バルブがカラン用に固定されてしまうと、シャワーから水が出なくなる一方でカランからは水が出続ける、という症状が現れます。サーモスタット混合栓の場合、切り替えバルブの部品交換が可能ですが、ツーハンドル混合栓では本体交換を推奨される場合もあります。 また、シャワーホースの劣化や損傷も考慮すべき点です。ホース内部に亀裂が入ったり、途中で折れ曲がったりすることで、水圧が低下し、シャワーに必要な水量が確保できなくなることがあります。カランは直接吐水口から水が出るため影響を受けにくいですが、長いホースを介するシャワーは水圧の変化に敏感です。 給湯器の故障も原因として考えられますが、カランからお湯が出る場合は、給湯器本体ではなく、シャワーへの給湯経路や、シャワー蛇口の設定温度が適切でないなどの問題が考えられます。これらの問題は、シャワーヘッドの清掃や止水栓の確認といった簡単なDIYで解決できる場合もありますが、切り替え弁の交換など、混合水栓の分解を伴う作業は専門的な知識と工具が必要となるため、専門業者に依頼することが安全かつ確実な解決策となります。
混合栓のシャワー不調カラン正常時の技術解説