私が以前、築三十年ほどの都内のワンルームマンションに引っ越したときのことです。内見のときには気づかなかったのですが、入居して初めての夜、お風呂に入ろうとしたときに不思議なことに気づきました。お湯はしっかり出るのですが、ベランダにも玄関の外にも、よく見かけるガス給湯器の箱が見当たらないのです。実家では屋外に給湯器があり、お湯を使うたびにボッという音がして火がつくのが当たり前だったので、静かにお湯が出てくる状況に少し不安を覚えました。不動産屋さんに確認するのを忘れていた私は、まずキッチンや洗面所の下をくまなく探しました。しかし、そこには排水管があるだけで、お湯を沸かすような機械は見当たりません。ふと、玄関横にある収納スペースの扉を開けてみると、そこには見たこともないほど巨大な白い金属製のタンクが鎮座していました。それが私の人生で初めて対面した「電気温水器」でした。そのタンクは、クローゼットの半分以上のスペースを占拠しており、まるで巨大なロボットが家の中に隠れているような威圧感がありました。調べてみると、電気温水器は深夜の安い電力を使って夜通しお湯を温め、それを一日中貯めておく仕組みだということがわかりました。ガス給湯器のようにその場で瞬時にお湯を沸かすわけではないため、一度タンクのお湯を使い切ってしまうと、また夜が来るまでお湯が使えなくなるという、一人暮らしの私にとっては衝撃的な事実を知りました。もし、この機械の正体を知らずに、友達を呼んで大量にお湯を使ったり、長風呂を繰り返したりしていたら、翌朝には冷たい水しか出なくなっていたことでしょう。また、この機械があるおかげで、私の電気契約は少し特殊な夜間割引プランになっていたことも後から判明しました。電気温水器があるかどうかわからないまま生活を続けていたら、効率的な節約術も知らないまま損をしていたかもしれません。目に見える場所だけでなく、収納の奥深くにまで目を向けることの重要性を、私はこの引っ越しを通じて学びました。今では、静かに夜の間にお湯を準備してくれるその巨大なタンクに、どこか頼もしささえ感じていますが、やはり最初は、家の中にこんな大きな「お湯の貯蔵庫」があることに驚きを隠せませんでした。