便器の水位が低い意外な原因とは
トイレのタンクには問題なく水がたまるのに、なぜか便器側の水たまり(封水)だけがいつもより少ない、という不可解な現象に遭遇することがあります。このトラブルは、下水からの悪臭や害虫の侵入を防ぐという封水の重要な役割を損なうため、放置できません。この症状の9割以上の原因は、トイレタンク内部の「補助水管」という、直径1センチにも満たない細いチューブの設置不良にあります。補助水管は、タンクに給水される水の一部を分岐させ、タンク中央にそびえ立つオーバーフロー管の内部に注ぎ込むための部品です。この管を通って供給される水こそが、一度排水されて少なくなった便器の封水を、適正な水位まで補充する役割を担っています。しかし、タンクの蓋を開け閉めした際や、何かの振動で、この補助水管が本来あるべきオーバーフロー管から外れてしまうことが頻繁に起こります。外れた補助水管はタンク内に水を供給するだけなので、タンクは問題なく満水になりますが、便器側への水の供給ルートが断たれてしまうため、便器の水位は低いままになってしまうのです。この場合の対処法は極めて簡単で、タンクの蓋を開け、外れている補助水管の先端を、オーバーフロー管の上部にある差し込み口(クリップなどで固定されている場合もある)にしっかりと差し戻すだけです。ごくまれに、排水管の奥でトイレットペーパーなどが部分的に詰まり、毛細管現象やサイフォン現象によって便器の水が少しずつ排水管側へ吸い出されてしまうケースもありますが、まずはこの補助水管のチェックを最優先で行うことが、問題解決への最も確実な近道と言えます。