トイレの水がなかなかたまらない、あるいは便器の中に常に水がチョロチョロと流れ続けているという症状は、単に不便なだけでなく、家計を直撃する「見えない水漏れ」のサインであり、放置すると水道料金が予期せぬほど高額になる危険性をはらんでいます。この現象の主な原因は、タンクの底で排水口を塞いでいる「フロートバルブ」というゴム製の部品の劣化です。このバルブが古くなって硬化したり、変形したりすると、タンクと便器の間にわずかな隙間が生まれ、そこから水が常に漏れ出し続けます。タンク内の水位が少しでも下がると、給水装置であるボールタップは「水が使われた」と判断し、下がった分だけ水を補給しようとします。しかし、補給するそばから水が漏れ続けているため、いつまで経ってもタンクは満水にならず、ボールタップは延々と給水を続けてしまうのです。この漏水量は、見た目には僅かなチョロチョロとした流れでも、24時間365日続くと膨大な量になります。例えば、糸を引く程度の漏水でも、1ヶ月で数千円から一万円近く水道料金が跳ね上がるケースも珍しくありません。もし、家族全員が水を使っていない静かな時間帯に、トイレの中から「シュー」という音が聞こえ続けたり、便器の水面が常に揺れていたりする場合は、この種の漏水を強く疑うべきです。最も確実な確認方法は、家中の蛇口を全て閉めた状態で、屋外の水道メーターの蓋を開け、「パイロット」と呼ばれる銀色の円盤を確認することです。もしこのパイロットが少しでも回転していれば、家の中のどこかで確実に漏水が起きています。高額な請求書が届いてから後悔する前に、トイレの小さなサインを見逃さず、早急な部品交換を行うことが賢明です。