古い大規模マンションや、バブル期に建てられたリゾートマンションなどでは、電気温水器の所在が非常に分かりにくくなっているケースが多々あります。これには当時の設計思想が関係しています。かつては、生活感を隠すために住宅設備を徹底的に壁の裏や収納の奥に隠蔽することが美徳とされていた時期がありました。ある築四十年のマンションで行われた調査では、入居者が交代するたびに「給湯器がどこにあるのか」が分からなくなる事態が発生していました。実際に専門家が調査したところ、驚いたことにキッチンの吊り戸棚のさらに奥にあるデッドスペースに、特注の細長いタンクが埋め込まれていたのです。このようなケースでは、外から見ても全く分からず、壁を叩いた時の音の違いや、配管が吸い込まれていく方向を辿ることでしか発見できません。また、リノベーションが繰り返された部屋でも、所在が不明になることがあります。以前の持ち主が間取りを変更した際、温水器を移動させずに周囲を新しい壁で囲ってしまい、点検口だけがクローゼットの奥にひっそりと残されているようなパターンです。さらに、古い集合住宅では「集中給湯方式」という、マンション全体で巨大なボイラーを共有し、各部屋にお湯を配る仕組みが採用されていることもあります。この場合、個別の部屋に電気温水器は存在しませんが、壁の中からお湯が出てくるため、個人の所有物なのか共有の設備なのかの区別がつかなくなります。もし、家中を探してもタンクが見当たらず、分電盤にも温水器のスイッチがない、それでいてお湯は出るという場合は、この集中給湯か、あるいは隣の住戸との境界壁付近にあるパイプスペースの中に隠されている可能性を検討すべきです。こうした所在不明の設備は、故障した際に壁を壊して取り出す必要があるなど、将来的に大きな改修費用が発生する要因にもなります。中古物件を購入する際には、図面を精査し、お湯の供給源がどこにあるのかを実物で確認することが、後々のトラブルを避けるための極めて重要なポイントとなります。