大規模な地震や台風などの自然災害が頻発する日本において、防災対策として食料や水の備蓄を進めている家庭は多いですが、住まいのインフラを制御する水道元栓の場所を確認している家庭は驚くほど少ないのが現状です。被災時、家屋の揺れによって目に見えない壁の中や床下の配管が損傷し、そこから水が漏れ続けることで、避難先から戻ったときに自宅がカビだらけになっていたり、建材が腐って住めなくなっていたりする事例が後を絶ちません。地震直後の混乱の中で「元栓はどこだったか」と探し回る余裕はありません。平常時の今だからこそ、家族全員で元栓の正確な位置を共有しておくことが、立派な防災アクションとなります。戸建て住宅では、道路に近い敷地内の地面にあるメーターボックスがその場所ですが、雪が積もる地域では、雪の下に埋もれてしまわないよう、高い位置にハンドルがある「不凍栓」の形をとっていることもあります。自分の家の元栓が、地面に埋まっているタイプなのか、それとも地上に立ち上がっているタイプなのかを確認し、冬場でもすぐにアクセスできる状態にしておく必要があります。集合住宅の場合は、玄関横の扉の中にあることが一般的ですが、オートロック付きの高級マンションなどでは、管理員室で一括管理されていると勘違いしている住人もいます。実際には各戸ごとに操作可能な元栓が必ず用意されていますので、一度実際に扉を開けて、自分たちの部屋の番号が記されたメーターを探してみてください。また、元栓の場所を確認するのと同時に、その周辺の環境も整備しておくべきです。メーターボックスの中に土砂が溜まっていたり、クモの巣が張っていたりすると、緊急時に手を入れるのを躊躇してしまいます。定期的に掃除を行い、清潔な状態を保つことで、いざという時の心理的ハードルも下がります。操作方法についても、右回しで閉まるという基本を子供たちにも教えておきましょう。万が一、大人が不在の時に水トラブルが起きても、子供が元栓の場所を知っていて閉めることができれば、被害を最小限に抑えることができます。さらに、元栓を閉めるという行為は、漏水対策だけでなく、断水からの復旧時にも役立ちます。断水が解消された直後の水は、配管内の錆や空気が混じって濁っていることが多く、そのまま給湯器や洗濯機に流し込むと故障の原因になります。元栓を閉めておけば、復旧後にまず外の蛇口や洗面所などで少しずつ水を出して、きれいになったことを確認してから家全体の供給を再開するという安全な手順を踏むことができます。水道元栓は、家というシェルターを維持するための「緊急停止ボタン」です。このボタンがどこにあるかを把握し、いつでも押せる準備をしておくことは、食料を備蓄することと同じくらい、家族の生活再建を左右する重要な鍵となります。今週末の家族の議題として、ぜひ「我が家の元栓チェック」を取り入れてみてください。それは、何気ない日常を災害から守り抜くための、最も確実で賢い備えとなるはずです。
水道の元栓がどこにあるか知ることは家族を守る防災術